夏 休 み 未 来 教 室
春 野 夢 男
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「えっ! あっちの方が、ムズムズですって? えへへへ、私がそんなに魅力的だったんですか?」
「ま、まあね。身長もそれほど無いから、俺としては、タイプも好みだし、ピッタリ来たからねサイズ的にもね。
あははは、良過ぎて困ったのさ。
さっきの水着の時なんか、かなり危なかった。情欲を抑えるのに一生懸命だった。だから最初は素早く動け
なかったのさ、テントを張りそうだったからね、あそこが」
「ええっ! じゃ、じゃあ、い、今は?」
「今もかなり危ない。でも、俺はダウクーガーみたいにレイプはしない主義だからね。男としては駄目なのかな?」
「ううん、そんなこと無い。ああ、時間が無いのが残念だわ。その、えっと、あの、口じゃ駄目かしら?」
「えっ! 口でやってくれるのか?」
「はい。短い時間で何とかするとすればそれしかないでしょう? それとも、キスだけにする?」
「うーん、しかし、俺は口じゃ行かない様な気がするけどね」
「とにかくOKなのね?」
「ああ、もうビンビンになって来たよ」
「うふふふ、きっと満足させてみせる。五分あれば十分よ」
キャシャーンはチャーリーのいきり立った物を口に含んで愛撫を始めた。お互いに恋人は居たのだったが、
それも含めて、一切の邪念を払って懸命にやった。
しかし、五分過ぎてもチャーリーは果てなかった。似たような経験は以前にもある。更に五分続けたが、どう
しても絶頂に達しなかった。チャーリーもキャシャーンもついに諦めた。
後始末をして、改めて濃厚なキスをして短い不完全な情交は終った。もう一度髪の乱れなどをお互いにチェッ
クし合って、名残惜しそうにしながらキャシャーンはテントから出て行った。直後にキャロルが入って来た。丁度
十五分経ったのである。正美とゲルクも続いて入って来た。
「何をお話したのかしら? 変な声が聞こえた様な気がしましたけど」
怪しんだのは正美だった。
『しまった、夢中になっていたし、確かによがり声も上げたからな。しかし小さな声だった筈だけど……』
そう思ったがチャーリーは何も答えなかった。何を言っても言い訳に受け取られそうだった。
「失礼よ、正美さん。仮に何かあったとしてもチャーリーさんは神に等しい人。全てが正しい行いなのだから、批
判的に言うべきではありませんわ!」
即座にキャロルが厳しく正美に反論した。やはり目付きにどこかおかしなところがある。
「あ、ああ、そうね、私が悪かったわ。チャーリーさんに限って変なことなんかある筈は無いものね」
キャロルの目を見て正美は慌てて謝罪した。
「それより、試合というか、競技というか、そっちの方はどうなるんでしょうかね? さっき係りの人に聞いたと
ころジャックスさんは命には別状無いものの、全治六ヶ月の重傷だそうですよ。体のあちこちが骨折している
し打撲も酷いようですしね。
ただ、元々が頑強な肉体の持ち主だったから助かったらしいです。でもこれでアメリカ陸軍のパワースーツ
部隊は相当のダメージになりますね。
勝って当然の積もりで来たのでしょうからね。それが惨敗なんですから目も当てられない。ああ、しかし喉が
渇きました。ああ、そうだ、缶コーヒーでも買って来ましょうか?」
ゲルクは気を利かせて言った。
「ああ、それは私の秘書の仕事だ。キャロル、四人分の缶コーヒーを買って来なさい。お金は持っているか?」
「はい、こういう時の為に、小銭も用意してありますわ。チャーリー様のお好みは何でしょうか?」
「そうだな、少し疲れたから、カフェオレにしよう。ゲルクと正美は?」
「私はアイスミルクティー」
「ああ、私はレギュラーのコーヒーで良いよ」
「だそうだが、覚えたかな?」
「はい、チャーリー様はカフェオレ、ゲルクさんはレギュラーコーヒー、正美さんはアイスミルクティーです」
「その通りだ。キャロルは何にする?」
「私は勿論チャーリー様と一緒ですわ。それでは直ぐに買って参ります」
キャロルは楽しげに買いに行った。
「ふう、神経が疲れますわね、さっきのキャロルのあの目。本当に迂闊に言えませんわね。ところでさっきはど
んなお話があったんですか? 無理にお聞きはしませんけど」
改めて正美は聞いて来た。
「まあ、お互いに誤解があったことが分かったんだよ。色々と話し合ってね。簡単に言えば誤解はすっかり解
けたというところだ。ただ、内容についてはノーコメントだ」
「ノーコメントですか? ははあ……」
ゲルクはちょっと首を傾げた。
「うふふふふ、良く分かったわ。怪しい声に関しては、まあ、私の聞き違いの様ね。そう思えば一番無難なのよ
ね。でも、私もノーコメントの関係になりたいわね……」
正美は仕舞の方はごく小さな声で囁いた。
「お待たせしました。皆で座って一緒に飲みましょう」
丁度良いタイミングでキャロルは戻って来た。それから暫くの間缶飲料を飲みながら雑談をしていたが、小
一時間ほどして、テレビ局のスタッフが一人やって来て、今後の方針を伝えたのである。
「長らくお待たせしました。今回のジャックスさんの件は偶発的な自損事故扱いになりました。事件ではなく事
故ということになりました。
しかも、本人の身勝手な行動によって引き起こされた、不注意による事故ということになりました。それで、
少し遅れましたがテレビの録画取りの方は予定通り行うそうです。それでは皆さんどうぞこちらへ来て下さい」
そう言うとさっさとテントの外へ出て行ったのだった。皆はその後を小走りに追った。
「ええと、チャーリーさんは向うの特設ステージへどうぞ。ああ、それからキャロルさんも。正美さんとゲルクさ
んはこちらへどうぞ」
そのスタッフは外でチャーリーとキャロルの向かう方向と、正美とゲルクの向かう方向を指示した。チャー
リー達は新たに作られた小さなステージヘ向かう事になった。
正美達は前から居るチャーリーの関係者専用の一角に向かう事となった。二組の者達は軽く手を振ってし
ばしの別れを告げたのである。
「さあ、イベント再開です。一時はどうなる事かと思いましたが、やれやれで御座いますね。それでは今後の
事は、少々別行動をしておりましたキャシャーンが復活です!」
アンディが大袈裟に言うと、ニコニコと笑顔を見せて、キャシャーンが登場した。
「ちょっとの間ご無沙汰しておりましたが、ここに来まして復活いたしました。うううっ! ああ、変ね、どうして
泣けて来るのかしら?
ああ、これは多分嬉し泣きです。はははは、私、今日はちょっと変です。でも頑張りますわ。さあ、チャーリー
さん次の競技は何だと思いますか?」
泣いたり笑ったり幾分情緒が不安定になっているキャシャーンだったが、グッと堪えて仕事を遂行した。例に
よってキャロルは少し離れた所で、今回は立ったままでじっと模様を見ていた。
「うーん、今度は正確さを競うのでしたよね?」
「はい、ですがアーチェリーではありません。でも似たようなものかも知れませんわよ」
「じゃあ、ダーツとか?」
「近い!」
「うーん、まさか吹き矢とか?」
「ピンポーン! 大正解! チャーリーさん素敵ですわ。ああ、その、良くお分かりになったわね。こ、こ、これ
はご褒美です」
キャシャーンは何を思ったのか、チャーリーに抱き付いてほっぺに軽く一瞬キスをした。いや、随分長かった
様にも思えた。
「あはははは、これはこれはキャシャーンさん、大サービスですね。あんまりそういう事をしない人だと思いまし
たけどね。ま、まあ、良いでしょう」
色々言いたい事があったようだが、アンディは敢えて言わなかった。キャシャーンの様子が何かおかしいと
気が付いたからでもある。
「吹き矢ですか。しかしやったことが無いんですけどね。子供の時にイタズラでやった事があった様な気はしま
すけど、それだけの事ですからね。で、相手は誰ですか?」
「私です。ンピヘカと申します。南米の少数民族の長をしております」
下手の方から現れたのは原色を多く使った衣装を身に纏った、南アメリカの原住民だった。達者な英語から
推測すると、もうすっかりアメリカ人になっているようだったが、敢えて原住民の格好で現れたのである。
「さて、これは何とも奇妙な取り合わせですが、御覧のように的が二十メートル先にあります。これはアーチェ
リーで使われるものを参考にして、作りました。
中央の円が僅か直径十センチ。まあ、レベルは勿論最高でしょうから、そこに当たったか当たらなかったか
で得点と致します。
当たれば一点、当たらなければ零点。十回ずつ交互にやって頂いて、得点の多い方の勝ちとします。もし同
点の場合には、野球の延長戦の様な、サドンデスルールで行きます。どちらが先行か後攻かを決めますが、
コインの裏表にしましょうか?」
今度はアンディがサラサラと説明した。
「ああ、私が先にしましょう。これは全く自信がありません。皆さん何かをお忘れの様なので、先ず私がやって、
早く決着を付けてしまいましょう」
チャーリーはもう勝ち目は無いと考えている。
「いや、いや、今回は惜敗ならチャーリーさんの勝ちになっておりますから、そう悲観したものではないでしょう。
その、ンピヘカさん、後攻めで宜しいですか?」
「ああ、私はどちらでも宜しい。まあ、百発百中の自信もありますしね」
「それでは、やって頂きましょう。吹き矢と筒とはこちらで用意致しましたが、これで宜しいですか、チャーリー
さん。ンピヘカさんは自前の吹き矢と筒とをお持ちですが」
今度はキャシャーンが筒と吹き矢を持って登場した。ンピヘカは最初から持って来ていた。