夏 休 み 未 来 教 室 


                                              春 野 夢 男

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 事件はその夜起きた。夕食の時にも何かララ様子が変だったのだが、
「ドン、ドン、ドン!」
 かなり乱暴にチャーリーの部屋のドアを叩いたのである。

「ああ、誰だ? そんなに叩かなくても今開けるから」
「ハア、ハア、ハア、はらく、早く、らかに、中に、ひれて、入れてよ!」
 息遣いが荒く、言葉がきついが不鮮明なのは、かなり酔っているからの様である。

「あ、あ、有り難う。暫く休ませてね」
 ドアを開けると、急にまともな言い方になった。
「ま、まあ、良いけど、どうしたんだ?」
「苦しいのよ、……男に抱かれたいのよ、もう我慢出来ない、ううううっ!」
 泣きながらララはエッチすることを要求した。

『ははーん、これがいわゆる、性的ヒステリックだな。もし男だったら、女をレイプせざるを得なくなるらしい。
ううむ、どうすれば良い?』
 チャーリーは兎に角部屋に入れて、暫く話を聞くことにした。
『場合によってはエッチも止むを得ないだろう。しかし、明日は林果が来る。女たらしになって、林果に軽蔑さ
れる積りだったけれど、いざとなると、ビビるよ、全く!』
 林果の態度が怖かったが、軽蔑の眼差しを甘んじて受けることに決めた。元々その積りだったのである。

「私ねえ、少しは堅そうに見えるでしょう?」
「まあね」
「でも、本当は淫乱なのよ。言いたくないけど、どスケベなの。仕方ないのよ、そういう環境で育って来たんで
すから」
 怒涛の如くララは本心を打ち明け始めたのだった。チャーリーはコーヒーを自分の分と、二人分作って勧
めた。
 コーヒーには興奮させる作用もあるが、頭をスッキリさせる作用もある。酔った女性だったら、むしろ冷静
にさせる作用の方が強いと判断して飲ませたのだった。

「あ、有り難う。兎に角話を聞いて」
「うん、今夜はじっくりと聞かせて貰うよ」
「わあ、嬉しい!」
 ララはイスから立ち上がって、チャーリーに抱き付きキスを求めた。一瞬躊躇ったが、要求に応えた。数
分間の熱烈なキスの後で、またララは猛然と喋り始めたのである。

「信じられない様な家庭なのよ。セックスに関して限りなくルーズな家庭だったのよ。私は父や兄の性的な
ペットでもあったの。
 母親は他の若い男に夢中だったし、場合によっては皆で乱交したこともあった。何時か私はそこから逃
れて平穏な暮らしを始めたんですけど、ちょっとでも酒が入ると淫乱の血が騒いで仕方が無いの。
 あはははは、最低でしょう? はあ、でもどうにも出来ないのよ。ここに来る前も毎日男無しでは居られな
かった。
 ここに来たのはそんな自分に嫌気がさして、ちゃんとしたレディになりたかったから応募したのよ。こう見
えても大学はかなり良い成績で卒業しているのよ。
 絶対に色仕掛けで教授を誑(たら)し込んでは居ませんからね。それだけは信じて頂戴。幸運にも私は
ケッペル先生の生徒だった関係でここに来る事が出来たのよ。信じます?」
 ララは信じて欲しいと目で訴えた。

「ああ、信じるよ。まあ、私も大人だからね、淫乱な人が頭が悪い訳ではないと知っている積りですよ。変な
例えかも知れないけど、ダウクーガーは超淫乱な男だったが頭は頗る良かった。
 淫乱と頭の良し悪しとは余り関係ないと思うよ。まあ、人によっては私もかなり淫乱だと言うかも知れない。
まあ、確かにかなりの女性と関係を持って来たからね」
 チャーリーは慰めの気持ちも込めて自分の淫乱ぶりを強調した。

「へえ、そうなんだ。ちょっと安心した。それでさっきの話の続きなんだけど、私は我慢出来る限り我慢した
のよ。
 でも、もう限界なのよ。自由に出歩けるんだったら、外で男とエッチしたり、外から男を連れ込むんですけ
ど、ここでは不可能だった。
 平気だったのは最初の一日だけだったわ。二日目からはもう地獄だった。毎晩オナニーしまくっていたの
よ。でも、もうそれも限界、お願い私を抱いて下さい。
 お金が欲しかったら、千ドル位ならあるわよ。お願い、ねえ、お願いだから私を抱いて。ああ、もう狂いそ
うなのよ!」
 そう言うなり、ララは着ていた服を脱ぎ始めた。

『ううむ、ちょっと可哀想だな。仕方が無い、これも人助けだ。林果、お前に軽蔑されるのは相当に堪えるけ
ど、でも、軽蔑して俺から離れて行ってくれて良いぞ!
 俺は淫乱などスケベ男なんだからな。さようなら林果! さようなら昇一! 俺は薄汚れたどうしようもない
男に過ぎなかったのさ。さよなら!』
 チャーリーはその時、林果と息子の昇一にキッパリと別れを告げたのだった。

「一緒にお風呂に入ってたっぷりやろうよ。はははは、奇麗な体をしているじゃないか。あんたの父親や、
兄貴が狂うのも無理は無いな。
 美しさは罪って昔から言うだろう? ブスだったら平凡な家庭だったんだろうけど、余りにも美し過ぎて、
まあ、どんな男でも狂うよ。ララ、さあ、お風呂に行こう」
 チャーリーはララを風呂に誘って、激しい情交を数時間にわたって交わし続けた。へとへとになったララは
チャーリーのベットで高鼾(いびき)を掻いて眠ったのだった。

『はははは、ふうむ、よっぽど飢えていたんだな。そうだと知っていたら、もっと早くエッチしてあげていたの
にね。それにしてもメガネを外した顔は何という美しさだろう。
 本当に親兄弟でもこの美貌だったら狂うだろうな。セックスに元々ルーズな家庭だったら尚更だろう。はあ、
しかし満足してくれて良かったよ。
 さて、俺はララちゃんの部屋で寝よう。二人が眠るのには狭いベットだからね。朝になったらビックリする
かな? はははは、まあ、その位はどうという事も無いだろうよ』
 そう考えてチャーリーは部屋を出たのだが、驚く事があった。

「私には軽いキスしかなくて、ララには十分にセックスがあるのね!」
 激しい怒りの表情の正美が下着姿で廊下に立っていたのだった。
「ええっ! 正美さん、何時から居たんだ?」
 チャーリーはすっかり聞かれたと思った。勿論、あれだけの声を出しての情交である。隣の部屋の正美が
知らない訳は無い。

「一時間以上前からよ。余りに凄い声で、誰だって目が覚めるわよ。ううううっ、私には、私には、何も無い
んですか! 私は貴方にとって紙屑の様な物なのですか!」
 正美は泣きながらチャーリーを非難した。

「いや、そんな事は無いよ。大切に思っている。だから抱けないんだよ。俺に抱かれた女性達は大抵不幸
になっている。
 正美は大切な友達だから、不幸になって欲しくない。だから抱かなかったんだ。分かって欲しい。私にとっ
て正美は本当に大切な人なんだよ」
 チャーリーも必死になって言ったが、正美は納得しなかった。

「不幸になっても構いません。私は貴方に抱かれたいんです。ララみたいに、貴方に抱かれてオーガズムに
達したいんです。
 貴方の腕の中で、絶頂を迎えたい。貴方のものになりたいんです。これほど頼んでも駄目なんですか! 
貴方はサイボーグです。
 普通の男の様に二、三度果てて、お仕舞という事は無い筈ですよね? 何度でも出来ますわよね? 私
も貴方の腕の中で五回位は果てたいんですけど、駄目でしょうか? ううううっ!」
 正美はララよりももっと激しい情交を求めていた。長い付き合いである。昨日、今日来たララに負けたくな
かったのだ。

「うーん、分かった。まあ、本当は正美ちゃんとしたかったんだけど、色々あってそう簡単にはね、行かなく
てね」
 チャーリーは駄目押しの覚悟を決めた。
『本格的に淫乱男になるぞ。林果に軽蔑され切ってしまうな。ああ、正直言って辛い。しかし、正美の要求も
もっともだしね』
 そう思って、4号室の向かいの8号室に二人で入った。なるべく声を聞かれない為だった。

「はははは、覚悟を決めたら何だかお腹が空いて来たな。ここは空室だけど、冷蔵庫にはちゃんと食べ物
やお酒の類も入っているよね?」
「ええ、そうよ。お、お酒を飲みましょうか?」
「うん、摘みはサラミ位で良いよ。それからじっくりとアレを楽しもう」
「うふふふ、じっくりアレをするのね?」
「ふふふふ、まあね」
 チャーリーはゆったりした気分でワイン等を飲み、時折、正美を安心させる為の濃厚キスを何度もしたの
だった。
 それから正美にはじっくり時間を掛けて情を重ねたのである。狭いと思いつつも、二人が抱き合いながら
ベットで眠ったのは午前三時過ぎだったろう。
 ただ次の日の予定もあるので、ケータイの目覚し機能を使って、朝の六時には起きてそれぞれの部屋に
戻ったのである。

「さあ、朝だぞ。自分の部屋に戻ってくれよ。そうしないと何かと都合が悪いからね」
 良い心持で眠っているララをチャーリーが起こしたのは、午前六時半頃だったが、
「あはん、チャーリー、起き掛けの一発お願い!」
 困った事に淫乱を自認するララはまたしてもセックスを求めて来たのである。

「もう、しょうがない奴だな。一回だけだからな!」
 仕方無しに情交に応じた。それでやっとララはスッキリ目覚めた様だった。それが午前七時。それから大
急ぎで自室に戻り身だしなみを整えてから、正美と共に朝食の支度をしたのだった。

「じゃあ、頂きましょう。未来教室まで余り時間が無いので、手早く済ませましょう」
 チャーリーはそう言ったが、ゲルクの表情は厳しい。ララと正美の二人と情を交わしたことを恐らくは知って
いるのだろう。

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